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キャンパスライフ

【学生ライターが徹底取材!】紙に込められた技術と想い ―株式会社望月印刷 工場見学レポート―


【学生ライターが徹底取材!】
紙に込められた技術と想い ―株式会社望月印刷 工場見学レポート―

 “BRIDGE CIC NEWS”は、異文化コミュニケーション学部公認の学生団体が発行する学部広報誌だ。読者は、本学部の在学生の保護者と卒業生であり、記事は全て学生が執筆する。発行は、7月と12月の年に2回。毎号異なるテーマで特集を組み、個性豊かなライターが自ら動き、感じたことを自分たちならではの言葉で発信し、学部の“今”を伝えている。創刊以来、紙媒体でお届けしている本広報誌(以下、BRIDGEとする)だが、その制作を支えてくださっているのが、望月印刷株式会社さんである。望月印刷さんは、東京スカイツリーを眼前に望む墨田区に位置し、創業120年を越える印刷会社である。
 自分たちが執筆したものが、紙面として形になり読者の皆さんの手元に届くまで、どのようなプロセスがあるのか、また印刷に携わってくださっている方々の想いを知るべく、2025年4月、BRIDGEの記事を執筆した経験のある学生ライター4名といつもBRIDGEの発行をサポートしてくださる本学部教育研究コーディネーター1名の計5名で、望月印刷・業平工場を訪問見学させていただいた。以下、その様子を学生ライター4名で報告する。(4年 奥田愛梨)

自動化が進む印刷現場に息づく職人技

 まず工場に入ると、各種認証や印刷技能検定1・2級に合格された方々の名前が掲示されている掲示板が目に入った。工場で働く方々は、これらの検定に毎年挑戦できる機会が設けられているそうだ。社員一人ひとりが技能の向上という明確な目標を持ち、「印刷」に向き合えるよう工夫されていると感じた。印刷物の色彩は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインキの色調を細かく調整することで決まる。ほんのわずかな調整によって色合いが大きく変化するため、正確さと同時に経験によって培われた判断力が必要とされる工程であると感じ、印刷技術の奥深さを改めて認識した。

インキの濃淡を調節する大型の機械

 次に訪れたのは、断裁作業が行われているスペース。そこでは、何百枚にも重ねられ大きな塊となった紙が、大型の断裁機によって次々と裁断されていた。社員の方々が慣れた手つきで紙の束を正確に動かし、位置を確認しながら作業を進めている姿が印象に残っている。重量のある紙を扱う工程でありながら、一連の動作には無駄がなく、滑らかな手さばきから高度な技術が感じられた。工場内には大型の機械が数多く並び、人員削減や自動化が進む中で、生産効率の向上が重視されている現状があるそうだ。その一方で、刷り上がった印刷物を社員の方が自らの目と手で確認し、必要に応じて地道に調整を重ねる姿があった。機械化が進んだ現在においても、人の感覚や判断によって支えられている工程が確かに存在し、そこには社員の方々のこだわりや長年の経験による職人技が表れていると感じた。(4年 奥田愛梨)

専門の機械を使って印刷物を断裁する様子

印刷物の色を専門的なスキルで細かく調整する
工場長の佐々木さん

印刷工場の技術者が作り出す現場の一体感

 工場で働く方は、どのような方が、どういった想いで、日々のお仕事に励んでいらっしゃるのだろうか。工場内には、数多くの機械が並べられており、エリアによって機械から発せられる音も、担当している方の雰囲気も様々であった。若い女性からベテランの男性まで、黙々と自らの作業に徹する姿は、プロの姿だと痛感した。
 とても広い工場の中でそれぞれが自分の仕事に没頭できる工夫が何か隠されているのではないかと思い、筆者は工場の細部まで目を凝らし見学していた。すると一つの掲示板が目に止まった。そこには、大きな写真や図と共に機械の操作や商品の品質確認などの注意事項がぎっしりと書かれた紙が掲示されていた。安全かつ正確に仕事が進むように工夫が施されていると感じると共に、このような細かい配慮が、工場で働く一人一人の熱量を向上し、チームの一体感を作り出しているように感じた。印刷物を通して多くの人に発信している職業だからこそ、紙を通したコミュニケーションにおける工夫も感じられた。このように細かいところまで配慮が施された温かい環境も工場全体の一人一人の熱量を高め合う一体感を作り出しているように感じた。
 工場案内をしてくださった平版工場印刷課課長の松浦さんは、私たちにこんな話もしてくださった。「紙の印刷物が少なくなる中で、紙の肌触りやページを一枚一枚めくる感覚、紙にしか出せない良さを大事にしてもらえると嬉しいです。特に、日本の技術者や印刷機は、世界でも誇れる技術を持っています。そこは、今後も期待して欲しいなと思っています」これまで印刷業に専念され職人として一つ一つの仕事に向き合われたからこそ誇れる技術力と言葉が胸に響いた。(4年 萩尾愛里紗)

掲示板の見方を説明してくださる平版印刷課課長 松浦さんと
夢中になって話を聞くライターたち

ライターの質問に実物を用いて説明してくださる紙工品課課長 佐々木さん

クライアントと印刷現場とをつなぐ「翻訳者」

 実際の印刷現場を歩いたことで、私たちの中にさまざまな疑問が沸き上がった。それらを確かめるべく、工場見学の後、さらに深くインタビューさせていただいた。私が特に印象に残ったのは、機械の前で数値を調整しながら、印刷された写真の色をじっくり見比べている姿だ。「BRIDGE」でも、掲載する写真の色味や明るさを細かく調整していただいているが、印刷の専門知識を持たない私たちの「こうしたい!」という要望は、どのようにして形になっているのだろうか。クライアントとのデザインのやり取りの裏側について、お話を伺った。
 営業部の松島さんは、クライアントからの要望は抽象的な表現で伝えられることが多いと話す。「鮮やかな赤で」という注文ひとつとっても、クライアント一人ひとりが思い描く赤のイメージは異なる。思いきり鮮やかにしたいのか、少しだけでよいのかといった度合いのすり合わせが欠かせないそうだ。デザイナーの上田さんは、そうしたクライアントの感覚的な要望を、印刷現場には数値や専門用語に置き換えて伝える必要があると語る。

特殊なレンズで印刷物の網点を観察するライター達

たとえば「ステーキの写真を美味しそうに」と言われた場合には「シアンを何パーセントに」、「モデルの顔色を明るくしたい」という要望であれば「濃度をこれくらい下げて」といった具合に、具体的な数値で指示を出すのだ。クライアントと印刷技術者との間に立ち、双方のコミュニケーションを媒介する上田さんの役割は、まるで外国語の翻訳者のようだと感じた。「両者がつながった瞬間に、よっしゃ!ってなります。それがさらに多くの人に伝わって、商品が売れたら、それは良い広告ですよね」と、その面白さを語ってくれた。
 二人のお話から見えてきたのは、クライアントが必ずしも印刷の専門用語を知っている必要はないということだ。大切なのは、まず自分の中に「こうしたい」という理想のイメージを持っていることだろう。私たちが外国語で話すときも、たとえ最適な単語を知らなかったとしても、伝えたいメッセージが明確であれば、自分なりの表現で伝えることができる。松島さんや上田さんの仕事の中に、私たちが学んでいる異文化コミュニケーションの視点を見いだすことができた。(4年 大城のあ)

紙に込める想いと願い ―BRIDGE CIC NEWS を紙で届けたい理由―

 私たちは「紙」からいったい何を受け取り、何を残し、伝えてきたのだろうか。私たちライターは、工場で働くみなさんと共に「紙で人々の想いを届けること」の価値とは何かについて取材をさせていただいた。
 営業部チーフリーダーの松島さんは「デジタルは残るようで消えてしまう。いくら反時代的であったとしても、私は紙と共に学び、感動する文化の担い手で在りたい」と語った。確かに、デジタルは記録には残っても、記憶には残りづらいと私も実感することが多い。価値のある情報を紙を通じて届けたいという松島さんの想いに私も共感した。この松島さんの言葉をきっかけに、ライターもそれぞれの紙への想いを語り始めた。
 編集長の奥田さんは、便利なデジタル媒体が情報収集のツールの主流になりつつある今だからこそ、温かみや安心感のある紙を通じて想いを届ける意義を考え続けたいと伝えてくれた。想いを届けるという視点においては、副編集長の大城さんも同じ意見だ。実際、学外の方にBRIDGEの紹介をしたときには、記事のオンライン化についての質問を受けることも多いのだとか。それでも、BRIDGEが紙にこだわる理由を彼女は、こう話す。「紙には『読ませる力』があると思います。読者である卒業生からも、毎号紙で届く嬉しさを聞いているので、これからも読者の思い出に残る記事をライターと共に紡いでいきたいと思っています」
 また、14号からBRIDGEのライターをしている萩尾さんは、学校生活でもノートとペンを使ってメモを取ることが習慣化されていると言う。紙特有の様々な質感から感じられる印象や書き心地は他には代えられない。紙との関わりから生まれる良さをこれからも残していきたいと感じたそうだ。

ライターにインクの濃淡の説明をしてくださる
営業部チーフリーダー松島さん

 インタビューの終盤に、松島さんは、今回、私たち学生に工場見学の機会を提供してくださった理由を教えてくれた。「本や印刷物への愛を言葉にして伝えてくれる若い世代が一人でも増えて欲しいと思ったからです。印刷業を営む者として、紙と歩むことの文化的価値を啓蒙していくことはミッションであると思いますし、学生の皆さんが、文字を読み、書くことを積み重ねていくことを通じて、知識・教養を得る時間を大切にしてもらえると嬉しいです」
 BRIDGE CIC NEWS は、学部の「今」を、プロの繊細な技術とデジタルにはない価値を届けたい情熱とが織りなす「紙」の上に、異なる価値観を持つライターが懸命に言葉を選び抜き、届けている。制作者と読者の想いと「今」が響き合う “BRIDGE” 「架け橋」として在り続けたいという願いを今回の工場見学を通じて、より強く感じることが出来た。立場や世代が違っても、私たちは「紙」というひとつの媒体を通じて想いを共有し、繋がることができる。この記事を読んでくださったあなたが、次に紙を手に取る時、誰かの想いと出会い、対話する異文化コミュニケーションのきっかけになればと願っている。(3年 庵本愛斗)

編集後記

「ぜひ工場を見に来てください」という、いつも担当してくださっている松島さんの言葉をきっかけに、今回の工場見学が実現した。記事を作成し、印刷を依頼してから紙面として手元に届くまでの工程には、自動化やデジタル化が進む現在においても、長年の経験あってこその職人技や紙への徹底したこだわりが根付いている。また、妥協することなくクライアントに寄り添い、その思いを技術者へ橋渡しをするコミュニケーション、多様な背景をもつ人々が協力し合い、工場全体で技術力の向上を目指す環境づくりなど、そこは私たちの想像を超える印刷への熱い思いと誇りに満ちた場所であった。
 インタビュー中に、期日を厳守している点や限られた文字数の中で表現に工夫を凝らしている点など、私たちの活動について松島さんからお褒めの言葉をいただいた場面があった。学外の方からコメントをいただく機会はこれまでなかったため、そのように受け止めてくださったことに嬉しく感じ、励みになった。
 編集長として、これまでは学生ライターをまとめ、記事を執筆することに注力し、記事完成後の工程に想いを馳せる機会は多くなかった。しかし、今回の工場見学を通して、BRIDGECIC NEWSとしての活動の意義を改めて見つめ直すとともに、これからも学生ライターと望月印刷さん双方の想いを読者に届けられるよう、より一層努力していきたいと改めて気が引き締まる思いであった。この貴重な機会を提供してくださった望月印刷の皆様に、心より感謝したい。(4年 奥田愛梨)

取材後、工場の皆様と一緒に撮らせていただいた写真。
望月印刷業平工場をバックに

本記事の編集メンバー。
工場から望む東京スカイツリーを背景に

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