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キャンパスライフ

豊島区 × 異文化 地域連携事業


異文化コミュニケーション学部の学生のアイデアで地域の多文化共生に貢献!
豊島区との協働プロジェクト「外国人向け住民税支払い案内」作り

異文化コミュニケーション学部の外国人留学生(韓国、中国、ベトナム)を含む有志の学生10人が、「地域貢献プロジェクト」の一環として、豊島区役所税務課と協働で「外国人向け住民税支払い案内」を作成しました。

「豊島区」×「立教大学」
コラボレーションの背景

豊島区では近年、外国人住民が急増し、全住民約29万人の1割超に上っています。しかし、住民税という仕組みがない国から転入してきた方が多いためか、「アルバイト先ですでに税金〈所得税〉が天引きされているのに、なぜまた区役所から税金〈住民税〉の請求がくるのか」といった問い合わせが複数寄せられており、外国人向けの住民税制度の周知が急務となっていたといいます。

豊島区役所税務課ではこれまでにも住民税の滞納対策として、税務相談窓口を設置し、外国人向けの支払い案内(住民税の催告書)にチラシを封入して、相談窓口の利用も呼びかけるなどの工夫を重ねましたが、なかなか反応率(相談窓口への来訪、分割納付の約束・納付など)が上がりませんでした。そこで今回、外国人住民に対するサポートで、区と連携して「立教日本語教室」を行っている異文化コミュニケーション学部に協働を依頼。外国人住民に反応してもらえる「住民税支払い案内」の作成を協力して行うことになりました。

支払い案内は、①支払いの催告書とそれを入れる封筒、②相談窓口の利用などを呼びかけるチラシの2つ。異文化コミュニケーション学部は、どのようにこのプロジェクトに参加して、どんな結果に着地したのか。さらに、地域の多文化共生にどのように貢献できたのか。約半年にわたるプロジェクトを振り返ります。

立教日本語教室の詳細はこちらから
https://icc.rikkyo.ac.jp/campuslife/activity/

「外国人向け住民税支払い案内」作成プロジェクト、キックオフ!

■キックオフミーティング(2023年2月1日)

 初回の共同ミーティングは、豊島区税務課の要望をお聞きすることがメインとなりました。外国人住民の住民税について、現状どのくらいの外国人が住民税未納となっていて、これが支払われないままだとどのような問題が生じるのか、住民税支払い案内(催告書)の内容や送付方法の説明を受けました。

税務課の希望は、反応率の向上を目指して、(1)催告書の送付対象の65%を占める20代の外国人住民をメインターゲットに、(2)わかりやすい日本語で、(3)偏見のない視点で、(4)外国人留学生の意見を反映した新たな催告書を作りたい。以上4点。また、動画やイラスト、SNSの活用なども含め、学生ならではの自由な発想に期待しているという声もありました。

外国人住民に反応してもらえる住民税支払い案内を目指す上で、日本の住民税の制度を理解してもらうにはどうすればよいかを考える必要があり、そこに、様々な文化的背景を持つ、異文化コミュニケーション学部に留学中の外国人留学生の視点を活かすことになりました。

キックオフミーティングの模様

外国人住民の方の反応率を上げる施策の提案に向けて
学生ミーティングを重ねる

異文化コミュニケーション学部の10人は、オンラインミーティングや、授業時間外の空いた時間を活用して、対面で教室に集まり、反応率を上げる支払い案内の提案に向けて準備を進めていきました。

■第1回 学生ミーティング(2023年4月10日)
テーマ 外国人住民の反応率が低い理由を探る

オンラインミーティングをしている武智さん、ソウユイイツさん、大神さん。
外国人留学生のソウユイイツさんは、支払い案内について周りの外国人の意見を集め、他のメンバーに共有しました。

第1回の学生ミーティングでは、支払い案内を受け取った外国人住民がなぜ反応してくれないのか、その理由と対策を考えました。

そこで出た意見の一つは「そもそも封筒を開けていないのではないか」「封筒の中身をあまり見ないのでないか」ということ。対策として最初に出た案は、短いテキストと写真で、まずは封筒を開けて「見て!」と訴えかける封筒とチラシの作成でした。次いで出たのは、封筒を開けて見たとしても「次にどんな行動に移したらいいのかがわかりにくいのではないか」という意見。これに対しては、チラシに「行動フロー」を載せるという案で一致しました。

また、「リンク先の内容が難しいのではないか」という意見もありました。リンク先で知らせることが必要かどうかも含め次回の検討事項となりました。
■第2回~第6回 学生ミーティング(2023年4月18日~5月24日)
テーマ 開けてもらえる封筒、読んでもらえるチラシ作りについて議論


第2回~第6回の学生ミーティングでは、分析結果をふまえ、次のような施策を提案することに決めました。

施策アイデア①
一目でわかるチラシ

「封筒の中身をあまり見ないのではないか」という考えから、動画やSNSなど、リンク先に行かなくても、チラシを見れば一目でわかる、そんなチラシをめざすことにしました。
具体的には、チラシに「行動フロー」の図を載せて、イラストや写真が映えるように、フルカラーに変更するという提案にまとまりました。

施策アイデア②
親しみやすい封筒

支払い案内に反応しなかった人の中には、「詐欺だと思った」という人や、ビザや収入との関連がわからず、放置していた人などもいることがわかりました。そこで、不安をあおるような強い色調のものではなく、安心感を抱いてもらえるような封筒を目指すという方向性で固まりました。
また、封筒に手書きメッセージを印刷する、豊島区のマークをモノグラムのように並べて強調する、区内の風景写真を入れる、住民税が使われている施設のイラストを載せる、などのアイデアが出ました。
これらの施策により、豊島区が安全に住める「ふるさと」であると認識づけ、住民税の用途などを理解してもらった上で、「相談する」という次のステップをとってもらえるような支払い案内を提案することにしました。

その他のアイデア~外国人留学生の視点から学ぶ~
作ったチラシを外国人コミュニティのある場所に貼るのはどうかというアイデアも出ました。輸入品を扱う物産店や映画館など、外国人住民がよく集まる場所をリストアップして、豊島区に提案することにしました。
日本人学生は、外国人留学生から、外国人コミュニティの情報、住民税のわかりにくさ、日本語の母語話者にはできない情報収集の仕方を学ぶことができたと言っています。

豊島区との意見交換会 第1回
2023年5月29日

現在使われている支払い案内を見ながら意見交換

いよいよ、豊島区との意見交換会です。学生ミーティングで議論を重ねた結果を、プロジェクトリーダーの大神さん(異文化コミュニケーション学部4年)がプレゼン。やさしい色で、手書きメッセージかイラストを入れた、開封率の上がる「親しみやすい封筒」の作成と、封筒を開けた人が次にどう行動したらよいかわかる「行動フロー」を掲載するチラシを提案しました。
「行動フロー」は特に税務課の方たちの反応がよく、封筒もチラシも、学生たちの提案のとおりに進めていくことになりました。外国人コミュニティにチラシを置くという提案にも、豊島区の広報の方から前向きなコメントをいただきました。

プレゼンの様子

提案した「行動フロー」の図

封筒とチラシの具現化へ

学生ミーティングを通じて、税務課との次(最終)の意見交換会に向けてさらに施策を詰めていきました。

■第7回~第12回 学生ミーティング(2023年6月5日~7月18日)
テーマ 最終案の決定に向けて、サンプルを作成


・封筒
封筒は、区のキャラクター「としまななまる君」を入れるパターンと、入れずにストレートな手書きメッセージを載せるパターンで検討。
色は複数のサンプル画像を見ながらイメージを膨らませます。親しみを表現するため、蛍光色やミックスカラー、金銀などの配色を使ったサンプルを作成し、検討を重ねた結果、ポジティブな気持ちで開封できて、緊張感を感じさせない、やさしいオレンジ色を第一候補とし、蛍光色のグラデーションを第二候補に絞りました。

・チラシ
チラシはこれまでの2色刷りからフルカラーにして、「行動フロー」の図を載せるほか、チラシを見ればすべてわかるという内容にすることに決まりました。
税務課との意見交換会でお聞きした、住民税を支払わない外国人住民の人物像(ペルソナ)からヒントを得て、「行動フロー」に加え、「Q&A方式」で住民税への理解を促すコーナーを入れるというアイデアが出ました。

「やさしい日本語」に奮闘
封筒に載せる日本語文は、「読んでもらいたい」「サポートしたい」というメッセージを伝えるために、「納入期限が短いと感じている方へ」「住民税の悩みを一緒に解決しましょう」など、日本で暮らす外国人住民に寄り添うものに変えることにしました。
重要文書であることは引き続き記載する必要があるため、「重要な文書」を意味する単語を外国語で記載することにしました。

アイデアの元となったメンバーの意見、アイデア
チラシの文章については、どんな文化や日本語レベルの人にもわかりやすい日本語文を考えていきました。やさしい日本語と聞いて思い浮かべるのは、ひらがなやカタカナを使った短い文ですが、中国出身のソウユイイツさん(異文化コミュニケーション学部3年)によると、「中国人は漢字が多い方が理解しやすい。やさしい日本語表現は国によって違う」とのこと。貴重なアドバイスでした。
大神さんは、「どんな表現が難しいかの感想は留学生によって異なり、「『外国人』と一括りで考えてはいけないと考えさせられた」「異文化コミュニケーション学部の日本語教育の授業で学んだ知識や、立教日本語教室での経験から、対象となる方達やそのレベル感を想定しやすかった。地域に住む外国人が身近な存在だった」と振り返りました。

豊島区との意見交換会 第2回
2023年7月19日

区との最終ミーティングで、2パターンの封筒、そして、行動フローとQ&Aを載せたチラシのレイアウトを確認してもらい、封筒とチラシが決定しました。

・封筒
郵便物の中で埋もれず、しかし、警告感や威圧感を与えない、やさしいオレンジ色に決定。親しみやすさを出すため、区のキャラクターである「としまななまる君」のイラストを入れ、税務窓口相談につながるQRコードをその隣に載せました。
「重要文書」という記載は、黄色い「としまななまる君」の色となじんで、ネガティブな印象が減りました。
⇒ほぼ提案どおり!

・チラシ
次に取るべき行動がわかる「行動フロー」と、「Q&A方式」による住民税の解説を入れ、さらにターゲット層である20代の方の目を引くよう、2色刷りからフルカラーに変更した新たなチラシが完成しました。
⇒ほぼ提案どおり!

第2回意見交換会の様子

プロジェクトを終えて

参加した学生3名に、今回のプロジェクトを終えての感想を聞きました。

■こだわった点
・日本らしい、柔らかい色合いの封筒にすることを提案しました。行動フローを入れたことで、より多くの日本語初心者に伝わるチラシになったと思います。(ソウユイイツさん)

■苦労した点
・支払い案内を送る対象になる外国人像の明確化。どんな人がこれを受け取るのかを考えるのが難しかったです。二つ目がやさしい日本語です。住民税の説明は難しい言葉も多いため、一つ目のターゲット像から考えて、伝える情報を取捨選択し、最大限やさしい言葉に直すことが難しかったです。(異文化コミュニケーション学部4年 武智さん)

■留学生との協働について
・留学生との協働により、外国人がどんなことを考えて日本で生活しているのかという解像度がグッと上がった気がしました。(武智さん)

・ミーティングでは、たまに日本語が通じない場合もあります。「どうすれば自分が伝えたいことをみんなに伝えるか、どうすれば異なる国の方とディスカッションをするか」。このような基本的交流能力は異文化理解の土台と思います。みんなの考えを聞きながら、自分の意見を話すのもお互いの文化を理解できるいいチャンスだと思います。(ソウユイイツさん)

■プロジェクトから得た、異文化理解に関する学び
・(立教日本語教室などで)日本に住む外国人の方と接する機会はありましたが、目の前にいる方に向き合うことが基本でした。このプロジェクトに参加して、実際に目の前に相手がいなくても、伝えたい相手の解像度を高めて相手目線で考えることの有効性を実感したので、異文化理解の観点にもそうでないところにもこの考え方は役立つと思います。(大神さん)

・このプロジェクトをきっかけに、中国以外の留学生の考えを聞いたり、日本の方の考えや彼らが思う問題点について考えたりすることによって、異文化コミュニケーション能力と考え方を身に付けられたと思います。日本社会の制度と現在直面している問題について、もっと知っていきたいと思いました。(ソウユイイツさん)

■今後に生かしたいこと
・(納税していないという)事実で人を判断するのではなく、その背景に目を配り、自分にできることがあったらそっとサポートをする姿勢を貫きたいと思います。これは今回住民税に関する封筒やチラシについて考えたことで感じました。(武智さん)

・みんなと話し合いながら、日本社会の制度について理解を深めると同時に、母国の社会制度と比べながら、文化の形成について新たな視点をもらったと思います。(ソウユイイツさん)

豊島区税務課の蛭川様、冨田様、坂田様からのコメント

1.今回のプロジェクトを学生に依頼しようと思った理由を教えてください。

豊島区は10人に1人が外国人住民ですので、「多文化共生」が重点政策の一つとなっています。そのため、以前から貴大学との地域連携プログラムとして「立教日本語教室」を開講していただいています。多文化共生を進めるうえで、生活上の様々なトラブル相談が区に寄せられていますが、今回、「住民税の支払い」という問題に対し、外国人に接することが多い異文化コミュニケーション学部の学生さんの新しい視点で、フラットな意見をいただきたいと考え、お声掛けしました。
ともすればネガティブなテーマをどうすれば外国人に届けることができるのか、区職員では思いつかないような、学生ならではの自由な発想を期待してお願いしました。

2.学生とのコラボレーションでしたが、プロジェクト全体を通じての感想をお聞かせください。

2023年1月にプロジェクトがスタートしてから、積極的に意見交換をし、常に期待を上回る提案をいただきました。
今まで職員が作成してきた支払い案内は、「税金を払ってください」というメッセージが前面に出たものでした。今回はメンバーの方に議論していただき、「住民税の大切さを理解していただく」ことをテーマに、税の知識を質問形式で記載したり、フローチャート式で表記したりと、学生ならではの柔軟な考えで、訴求力のあるデザインの新しい案内になったと思います。
学生の皆さんにはゼミや授業で忙しい中ご協力いただき、また、先生方や職員の皆さんには監修などでご協力いただき、本当にありがとうございました。

税務課の方と記念撮影

さいごに

 異なる国の学生同士で、背景も考え方も異なる中、「一人ひとりの感覚を大事にして、皆のアイデアをまとめていった」と、リーダーの大神さん。日本人学生と外国人留学生が協働したことで、これまでになかった支払い案内が完成しました。
 「過程と成果物には割と自信を持っていますが、やはり結果が伴ってほしい。(反応率アップという)目標達成ができなかった場合は、その原因をきちんと考えてからこの活動を終了としたいです」。

完成した封筒とチラシ

チラシ表

チラシ裏

*豊島区による発信はこちらでご覧いただけます。
https://www.city.toshima.lg.jp/013/kuse/koho/hodo/r0509/2309261337.html

結果報告(2023年12月追記)

今回はターゲットとして「住民税制度が理解できず納税に結び付かない外国人住民」を設定し、「電話の問合せ、窓口来庁相談、分割納付の約束」を含む反応率の数値目標を20%としました。
令和5年度の反応率は、25.5%を達成し、無事に目標数値をクリアすることができました。
今回のプロジェクトのように、今後も、地域住民の方が暮らしやすい多文化共生を目指して、地域貢献を行っていきたいと思います。

本プロジェクトがテレビで紹介されました!

2023年12月9日(土)、豊島区が放送する生放送番組「としま情報スクエア」に本プロジェクトに携わった学生が出演し、プロジェクトを紹介しました。当日の様子は以下よりご覧いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=aObA_yX02nw
(6:07頃から紹介コーナーが始まります)

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